同居して介護するなど老後の面倒を見ていた人は寄与分として多めに相続できるのですか?
1 寄与分の意義
⑴ 寄与分とは何か
寄与分とは,亡くなった方の財産の維持や増加に貢献した人に対して,通常の場合より多めの財産を取得させるための制度です。
たとえば,Aさんが亡くなり,Aさんの相続人として長男Bさんと,長女Cさんがいる場合を考えてみましょう。
通常であれば,Aさんの遺産は長男Bさんと長女Cさんが半分ずつ取得することになります。
しかし,Aさんは亡くなる5年前から寝たきりになり,長男Bさんが東京の自宅で24時間介護をしていたような場合,何も介護をしていない長女Cさんと遺産を半分ずつ分けるのは不公平といえます。
そこで,長男Bさんが介護を頑張った分,長男Bさんに多めの遺産を取得させる制度が寄与分という制度です。
⑵ 寄与行為の種類
ア 家事従事型
亡くなった方の事業を無償で手伝っていたような場合,その手伝いが寄与行為として認められる場合があります。
たとえば,亡くなったAさんが農家で,長男Bさんが農作業を長年無償で手伝っていたような場合が典型例です。
イ 金銭等出資型
亡くなった方に財産上の利益を給付していた場合に,その給付が寄与行為として認められる場合があります。
たとえば,亡くなったAさんが老人ホームに入る際に,その費用を支出した場合などが典型例です。
ウ 療養看護型
亡くなった方が病気療養中で,介護を行った場合に,その介護が寄与行為として認められる場合があります。
たとえば,亡くなったAさんが寝たきり状態になっていた場合に,長男Bさんが自宅で介護をしていたような場合が典型例です。
エ 扶養型
亡くなった方を継続的に扶養していた場合に,その扶養行為が寄与行為として認められる場合があります。
たとえば,亡くなったAさんに対し,長男Bさんが長年仕送りをしていたような場合が典型例です。
オ 財産管理型
亡くなった方の財産を管理していた場合に,その管理行為が寄与行為として認められる場合があります。
たとえば,亡くなったAさんが東京に賃貸不動産を所有しており,長男Bさんがその不動産の管理や立ち退き交渉等をしていた場合が典型例です。
2 相続人以外の者の貢献も考慮
⑴ 寄与分が認められるのは原則として相続人だけだった
寄与分は原則として相続人にのみ認められていました。
たとえば,妻が夫の両親の介護をしていたとしても,妻は相続人ではないため,妻に寄与分が認められることはありませんでした。
判例では,妻の貢献を相続人である夫の補助として評価し,夫の寄与分として認めるものもありますが,あくまでもそもそも介護等を行って寄与した妻本人のものとしては認められていませんでした。
妻が夫の両親の介護をするという場面は,決して珍しいものではないはずなのに,妻の介護が何らの評価も受けないことは不公平であると指摘されていました。
⑵ 法改正によって相続人以外の者の貢献も考慮されることになりました
上記のような不公平を解消するために,相続人以外の者の貢献も考慮されるようになりました。
つまり,相続人でない者が,亡くなった方の介護などをしていた場合,その人は相続人に対し金銭を請求することができるようになりました。
この金銭請求の権利を特別寄与料といいます。
3 寄与分と特別寄与料の違い
⑴ 対象者の違い
寄与分は相続人にのみ認められる制度であり,特別寄与料は相続人以外の親族に認められるという点に違いがあります。
ここでいう親族とは,6親等内の血族,三親等内の姻族を指します。
⑵ 手続の違い
寄与分は法定相続分を修正する要素とされています。
そのため,寄与分は遺産分割協議の中で,相続人同士が協議することになります。
これに対し,特別寄与料は遺産分割の手続きでは扱われません。
特別寄与料を請求する場合は,相続人に直接請求するか,家庭裁判所を通して相続人に請求することになります。
⑶ 寄与行為の違い
寄与分は大きく分けて5つの類型があることはご説明しました。
しかし,特別寄与料は5つの類型の全てで認められるわけではなく,亡くなった方の介護をしていた場合や,亡くなった方の事業を手伝っていた場合等,無償の労務の提供があった場合に限定されています。
そのため,たとえば事業資金の提供といった,金銭支出型の寄与行為では,特別寄与料は認められません。
4 期間の制限
特別寄与料は,特別寄与者が相続人に対して請求するものですが,相続人と話し合いがまとまらない場合は,家庭裁判所で特別寄与料を認めてもらうための請求をすることになります。
ただし,この請求ができるのは相続の開始と相続人を知った時から6か月以内です。
また,相続開始から1年が経過すると,誰が相続人か知らない場合であっても,特別寄与料は請求できなくなるので,注意が必要です。
5 特別寄与者以外の者の貢献
⑴ 原則
特別寄与料を請求できるのは,あくまで一定の親族だけです。
その親族の範囲外の人が亡くなった方の介護等をしたとしても,特別寄与料は認められないのが原則です。
⑵ 相続人の補助者として考慮
もっとも,亡くなった方の介護などをしていた方が,相続人と近しい人であり,実質的には相続人が介護をしていたと同視できるような場合があります。
たとえば,内縁の妻が内縁の夫の両親の介護をしていたような場合,実質的には内縁の夫が介護をしたものと同視して,内縁の夫に寄与分が認められる場合があります。
6 寄与分や特別寄与料でお悩みの方は私たちにご相談ください
寄与分や特別寄与料はとても複雑な制度です。
また,介護等を長年つづけていたのに,それが評価されないのはとても残念なことです。
そこで,寄与分や特別寄与料を請求する場合は,相続案件を多く扱っている私たちにご相談ください。
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