相続放棄
相続放棄をした方が良いケース
1 相続放棄をすべき代表的なケース
相続放棄をした方が良いケースは、大きく分けると二つあります。
⑴ 赤字になる場合
預金などのプラスの財産より、借金などマイナスの財産が多く、収支が赤字になる場合です。
相続放棄をすれば借金の支払いをする必要がなくなるため、相続放棄をした方がいい場合が多いです。
⑵ 価値のない不動産がある場合
不動産といっても、山や畑など売ることのできない土地や、いつ倒壊してもおかしくない家など、相続するとかえって迷惑なものもあります。
山や畑など値段のつかない不動産は、引取手が見つからなければ固定資産税だけかかってしまい、周りに迷惑がかからないように草刈りなどもしなければなりません。
また、家屋も取り壊しに100万円以上の費用がかかることも珍しくなく、仮に倒壊して隣家に迷惑をかけると損害賠償責任を追うリスクまであります。
しかし、相続人全員で話し合いをしないと取り壊しをすることもできません。
そのため、このような価値のない不動産がある場合は、相続放棄をしてしまった方がいい場合があります。
⑶ 他の相続人と関わりたくない場合
亡くなった人に子供がいない場合、兄弟姉妹や甥姪が相続人になってしまうことがあります。
何年も会ったことのない人から突然相続をしてしまうと、財産状況もわからなければ、他の相続人も全く知らない人ばかりということも多いです。
相続をすると、財産を調査し、相続人全員で話し合いをすることになってしまいますが、これはかなり大変です。
そのため、仮に財産がプラスになる可能性があるとしても、財産調査をせず相続放棄をしてしまう方も多いです。
2 相続放棄のデメリット
⑴ プラスの財産も相続できなくなる
相続放棄のデメリットは、プラスの財産も相続できなくなってしまうことです。
たとえば、自宅が亡くなった人の名義だった場合、相続放棄してしまうと自宅から出ていかなければならなくなってしまいます。
どうしても自宅を残したい場合は、借金と一緒に相続をするか、相続放棄をした上で相続財産管理人から自宅を買い取るなど工夫をする必要があります。
⑵ 放棄しても管理責任が残る場合もある
相続放棄をすると、相続人ではなくなるため、遺産である土地や建物に対して所有者としての管理責任がなくなります。
しかし、相続放棄をした人は、他の相続人や放棄により新たに相続人となった人が相続財産の管理をできるようになるまで、財産の管理責任を負います。
そのため、今にも倒壊しそうな家屋があるからと相続放棄しても、すぐに責任がなくなるわけではないので注意が必要です。
⑶ 保証債務はなくならない
相続放棄で支払い義務がなくなるのは、あくまで、「亡くなった人名義の借金」です。
亡くなった人が借りた借金であっても、保証人の名義が相続人名義である場合、相続放棄をしても借金の支払い義務はなくなりません。
そのため、相続放棄でプラスの財産を放棄したのに、保証人であったため借金だけ残ってしまったということがないように、よく確認をする必要があります。
相続放棄を依頼する弁護士の選び方
1 取り扱い件数で選ぶべき
弁護士に依頼する必要がある場面は、それ程多いわけではないと思います。
このため、いざ弁護士に依頼しなければならないとなった場合、誰に依頼すべきかは、悩ましい問題となります。
弁護士にも、現実には、得意分野とそうではない分野があり、どの弁護士に依頼するかにより、結論が大きく変わってくることがあります。
相続放棄を依頼する弁護士は、基本的には、過去の取り扱い件数で選ぶべきでしょう。
ここでは、その理由について説明したいと思います。
2 手続を確実かつ迅速に履践する
相続放棄は、多くの場合、手続を確実に進めることができれば、受理されます。
弁護士に依頼すれば、手続を確実に進めるという部分はクリアされるとは思います。
もっとも、手続を確実かつ迅速に進められるかどうかは、弁護士が手続に慣れているかどうかによって大きく異なってきます。
相続放棄の依頼を受けることが少ない弁護士であれば、必要な書類や書式に記載すべき事項について調べながら進めなければならないため、相応の時間が必要になります。
他方、普段から相続放棄の依頼を受けている弁護士であれば、必要な書類や書式に記載すべき事項を把握しており、スムーズに手続を進めることができます。
たとえば、弁護士に相談を行い、その弁護士に相続放棄に必要な書類(被相続人の戸籍、被相続人の住民票の除票、相続人の戸籍等)を質問したとして、弁護士はすぐに回答することができるでしょうか?
すぐに回答できる弁護士であれば、依頼者に、その場で必要な書類を伝えたり、職務上請求で取得したりして、スムーズに手配を行うことができるでしょう。
3 イレギュラーな事案に対処する
相続放棄においても、一定程度、イレギュラーな案件が存在します。
このようなイレギュラーな事案に対処できるかどうかは、弁護士によって異なってきます。
事案ごとの特殊性は多種多様であり、より相続放棄が認められる確率を高めるためには、事案の特殊性に応じた対応が求められます。
そして、過去に多くの相続放棄を取り扱っている弁護士であればある程、多種多様なイレギュラーな事案に対処したことがある確率が高まります。
このような理由からも、過去に多くの相続放棄の事案を取り扱ったことのある弁護士に依頼すべきでしょう。