相続財産が海外にある場合はどのように相続手続きを進められますか?
1 相続財産が海外にある場合
海外に金融機関の口座や不動産などの相続財産がある場合については、国内の場合と比べて、相続手続きが複雑となります。
それぞれの国ごとに相続の制度が異なるため、これらを調べた上で手続きを進める必要があります。
経済のグローバル化や近年の海外投資ブームで、相続財産の一部が海外にあるというケースも増えてきました。
特に、東京のような都市部では、企業の海外転勤や海外の企業・不動産への投資の勧誘の機会が多いためか、相続財産の一部が海外にあるというケースが多いように思います。
どこの国にどのような財産があるかによって、相続で適用される法律が異なりますし、相続税の対象となる要件も複雑となります。
以降でそれぞれ説明いたしますが、相続手続きを進める際には、専門家に相談の上、進められることをおすすめします。
2 相続に適用される法律
日本では、相続において適用される法律は、原則として被相続人が国籍を有する国の法律によります。
しかし、国によっては、預金や金融資産、動産と土地や建物等の不動産を分けた上、不動産については、不動産の所在する国の法律を適用するという相続分割主義を採っている場合があります。
他方で、動産等と不動産を区別していない法制度である相続統一主義が採られている国もあります。
相続分割主義を採っている国には、アメリカやイギリスがあり、相続統一主義を採っている国には、日本や韓国、ドイツがあります。
したがって、被相続人が日本人であっても、アメリカに相続財産の土地がある場合には、アメリカが相続分割主義を採っており、アメリカ国内の土地にはアメリカの法律が適用されることとなっているため、その土地の相続に関してはアメリカ法が適用されることになります。
3 相続税の対象
被相続人が日本国籍を有していた場合、海外にある相続財産は、一定の要件を満たす場合を除き、相続税の対象となります。
この要件というのは、被相続人と相続人が相続開始前の一定期間のいずれの時においても国内に住所を有していなかったことなどがあります。
この一定期間については、平成29年度の税制改正で、5年から10年へ延長されています。
また、場合によっては、日本だけでなく外国にも相続税を支払う必要があることもあります。
海外にある相続財産についても、税務署による税務調査が行われますので、相続税の申告は適正に行うようにご注意ください。
4 海外の相続財産に関する相談
このように、海外の相続財産については、日本の法律だけでなく、外国法が関わることもあることから、外国法にも詳しい弁護士に相談されることをおすすめします。
私たちは、相続に関する相談を多くお受けしておりますので、相続についてお困りの方がいらっしゃいましたら、ご相談ください。
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