遺留分対策について
1 遺留分対策を考えるにあたって
遺言を残す際、遺留分が原因となって、自分の望む相続ができなくなってしまうことを心配されている方もいらっしゃるかと思います。
そもそも遺留分は、相続人に認められた最低限の権利ですので、完全に奪うという発想で対策をしてしまうと、後から裁判所に遺言の有効性を否定されるリスクが大きくなってしまいます。
近年、遺留分対策の家族信託が無効と判断された裁判例があることは記憶に新しく、遺留分対策というのは、様々な角度から少しずつ、遺留分制度の根幹を害しない合理的な範囲で検討をしていくべき事項であるということができます。
2 具体的な遺留分対策
⑴ 遺留分の対象となる遺産を減らす
まずは、遺留分の対象となる遺産を減らすという考え方があります。
例えば、現金ではなく生命保険という形で財産を残す方法が挙げられます。
死亡保険金は生命保険契約に基づく金員です。
保険金を受け取る人の財産と考えられるため、原則として遺留分の対象とはなりません。
ただし、遺留分制度の趣旨に照らし合わせて考えたときに、遺産の額と比べてあまりに不合理なほど生命保険の額が多い場合には、死亡保険金に対しても遺留分請求が認められるという判例があります。
また、令和元年の相続法改正により、生前贈与に対する遺留分請求権は原則として生前10年前までに限る旨の限定がされましたので、いわゆる暦年贈与を利用した対策が、相続法改正前よりも有効になっています。
⑵ 遺留分の対象となる遺産の評価額を下げる
次に、遺留分の対象となる遺産の評価額を下げるという考え方があります。
預貯金を不動産に変えるというのが中心ですが、自社株の場合に会社の評価額を下げるという対策も含みます。
ただ、評価額については、紛争になったときに、当然ながら複数の評価方法がありますので、効果については流動的です。