相続手続き
相続手続きを専門家に依頼した方がよい理由
1 相続手続きは自分でやった方が良いのか、専門家に依頼した方が良いのか
例えば、他の相続人と争いになりそうで、どうもうまく話し合いができないと思われる場合は、専門家(特に弁護士)に依頼した方が良いと言えます。
それでは、相続人間で特に何を争うでもないという場合、専門家に依頼した方が良いのでしょうか。
2 ポイント1 労力
相続人間で争いがなければ、話し合いをする労力は確かに要らないといえます。
しかし、預貯金債権がある場合は金融機関、不動産がある場合は法務局で、名義変更などの手続きを行う労力は必要です。
その前提として、役所で戸籍謄本などを集めなければならないのもなかなかの労力が必要で、うまく計画を立ててやらないと、無駄に日にちや労力を費やすことになってしまいます。
こういった問題は相続ではよくある問題なのですが、それ以外にも、特殊な相続財産(株式、投資信託、暗号資産など)が発見された場合、その手続きにかかる労力たるや、いかほどかと言ったところだと思います。
そんな労力のかかる相続手続きを専門家に依頼することは、普段の生活が大変で、ちょっと余裕がないなという方には特に有用と言わざるを得ません。
3 ポイント2 専門的知識
結構時間はあるよ、そういうのも苦じゃないよ、という方も当然いらっしゃると思います。
しかし相続手続きでは、相応の専門的知識が必要になります。
例えば、戸籍謄本や除籍謄本を集めるとして、どういうことをお役所にお願いすればよいのか、どういう場合に法務局や金融機関から、「これじゃ戸籍の書類が不足だよね。」と言われるのか、いまいちわからないことがあります。
また書類と言えば、法務局にしても、金融機関にしても、それ相応の書類を必要とすることは間違いないです。
その書類の調達についても、専門的知識に基づいて判断をし、行動することができればよいのですが、一朝一夕で何とかなるものでもありません。
逆に、金融機関側から見ても、専門家から見ても本当は必要な書類であるのに、相続人の方がとある事情から誤解をしてしまった結果、書類の不足などで相続手続きが停滞するという事態が生じることも、ままあります。
そんな時に、専門的知識に基づき、適切な判断ができる専門家よりアドバイスを受けられれば、誤解に気づき、手続きの停滞という事態は防げるものと思います。
そんな専門的知識が必要となる相続手続きを専門家に依頼することは、この相続手続きで、専門的知識を身に着けるのはなかなか大変だなとお考えの方にとっては有用と言わざるを得ません。
4 ポイント3 交渉力
自分は時間もあるし、大学の法学部を出ているので専門的な知識はあるし、自分でできるかなぁという相続人の方も当然いらっしゃると思います。
しかし実際に手続きを進めるうえで、「言われてる書類って、本当に必要なのかな?」と思うことがあるかもしれません。
厳密に言うと、本来は手続きに必要ない書類、または金融機関側で用意できる書類ではあるが、相続人の方で用意してくれるならばそれに越したことはないという書類も確かにあります。
そういったとき、専門的な知識を前提とした「交渉」というものが可能である専門家であれば、担当者に質問をするなどして確認を取り、手続きを適切に進めることができます。
このようなケースでは、単純に専門的知識を有しているだけでは対応できず、それなりの交渉の場数を踏むなど経験あってこそできることであります。
そんな交渉(力)が必要な相続手続きを専門家に依頼することは、「交渉とか、ちょっとなぁ」とお考えの方にとっては有用と言わざるを得ません。
5 相続手続きを専門家に依頼することの有用性
以上のとおり、相続手続きを専門家に依頼した方が良い理由は確実に存在します。
ただ、実際依頼するとなると、専門家に支払う費用というコストの問題は避けられません。
また「そりゃ専門家居た方がいいけど、相続人間で争いないのに、なんでわざわざお金をかけるんだ?」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
相続人間で争いがない場合でも専門家に依頼をすることが有用であることは既に述べた通りです。
専門家への依頼の際には、コストの問題も踏まえ、自身の相続手続きで想定できる問題をできる限り認識したうえで、よりよい専門家を選択することが重要であると思います。